TeXの基本と概要を説明する.
TeXとはフリーの組版ソフトである.
TeXには取り込んだマクロに応じたいくつかの種類がある.その中でもLaTeX2εおよびその日本語版であるpLaTeX2εがよく使われている.
LaTeXを使うにはいくつかのファイルをインストールし,環境設定しなければならない.Windowsに比べLinuxではこの作業が比較的簡単に行える場合が多い.特にVine Linuxはフルインストールすると既に環境は整っている.このサイトではLinux上での作業を念頭におき,YaTeX機能を備えたEmacsによる作成方法を主に取り扱う.
TeXのソースファイルは,ある環境を設定し,その中にドキュメントおよびコマンド・宣言を記述することにより構成される.
環境とは,何らかの処理を行う目的で設定された範囲を表す.
テンプレート |
\begin{環境名} \end{環境名} |
---|---|
例 |
\begin{abstract} TeX文書の書き方を記述する. \end{abstract} |
YaTeX機能を使うことで簡単に環境設定ができる.
Emacs上(YaTeX) |
Ctrl + c b Space 環境名 |
---|
Spaceキーを押したあとTabキーを押すことで環境名の一覧が出る.
コマンドとは何らかの処理を行うための命令であり,しばしば引数を与えて処理内容を指示する.環境とは異なり単独の処理を行う.
テンプレート |
\コマンド名{引数} |
---|
宣言は書体の変更やセンタリングといった比較的簡単な処理に利用されることが多い.引数はとらずグループ化して利用される.
テンプレート |
{\宣言 グループ化} |
---|
LaTeXのソースファイルは大きく分けて,プリアンブルという文書全体の環境設定を記述する部分と本文の2つにわけられる.
例 |
\documentclass{jarticle} プリアンブル \begin{document} 本文 \end{document} |
---|
プリアンブル部分では,使用するパッケージファイルの宣言や変数の定義,設定の変更,タイトル文に関する記述を行う.
次のコマンドを使って,本文中で使用するパッケージファイルを宣言する.
テンプレート |
\usepackage[オプション]{パッケージファイル} |
---|---|
例 |
\usepackage{amsmath} \usepackage[dvips]{graphicx} |
LaTeXでは自分でコマンドを作れる.こうした自前のコマンドをマクロと呼ぶ.これに対し,始めから組み込まれている機能をプリミティブという.
テンプレート |
\newcommand{マクロ名}{マクロの定義} |
---|
表示する範囲を広さなどの設定を変更する.
テンプレート |
\setlength{パラメータ}{値} |
---|
文書のタイトル,著者名,日付を記入する.これらを表示するには本文部分で\maketitleを記入する必要がある.あるいは全て本文部分に記入してもよいが\maketitleはこれら3つの情報の後に記述しなければならない.
テンプレート |
\title{タイトル名} \author{著者名} \date{日付} |
---|
実際に表示したい文章や図・表,数式といった内容をコマンド・宣言などを用いて直接記述する.
文章を直接記入したりコマンドを用いることで,美しい文章を表示できる.
例 |
\LaTeXeを用いると美しい文書が作成できる. |
---|
表を作成し表示する.
例 |
\begin{tabular}{r|c|l} 11 & 12 & 13 \\ \hline 21 & 22 & 23 \\ \end{tabular} |
---|
簡単な図を直接作成したり,他の画像ファイルを取り込んだりすることで画像を表示する.
例 |
\begin{figure}[htbp] \includegraphics[width=0.5\linewidth]{figure-sin.eps} \end{center} \end{figure} |
---|
数式環境の中でコマンドを用いて数式を表示する.
例 |
\begin{equation} \exp{i \theta} = \sin \theta + i \cos \theta \end{equation} |
---|
コマンドの先頭で使われる記号としてバックスラッシュ(\)や円記号(\)があるが,共に同じ働きをするため注意する必要はない.主にWindowsでは円記号(\)で表示され,UNIX系OSではバックスラッシュ(\)で表示される.
表示されないコメントを付けたい場合は次の様に記述する.
テンプレート |
%コメント
|
---|
YaTeX機能により,指定したリージョン内をコメントアウトできる.
YaTeXコマンド |
Ctrl + c >
|
---|---|
例 |
数行にわたる文章において,ある部分 のみをコメントアウトする.今回この 白く囲まれた部分を指定したとする. |
出力 |
数行にわたる文章において,ある部分 のみをコメントアウトする.%今回この %白く囲まれた部分を指定したとする. |
逆に,指定したリージョン内のコメントアウトの解除もできる.
YaTeXコマンド |
Ctrl + c <
|
---|---|
例 |
数行にわたる文章において,ある部分 のみをコメントアウトする.%今回この %白く囲まれた部分を指定したとする. |
出力 |
数行にわたる文章において,ある部分 のみをコメントアウトする.今回この 白く囲まれた部分を指定したとする. |
この他にパラグラフ全体のコメントアウトやその解除も次の様にして行える.
コメントアウトの実効 |
Ctrl + c .
|
---|---|
コメントアウトの解除 |
Ctrl + c ,
|
TeXファイルでは,以下の文字が特殊文字として取り扱われている.
表示させたい記号 | 対応するコード |
---|---|
\ | \textbackslash |
& | \& |
$ | \$ |
# | \# |
% | \% |
{ | \{ |
} | \} |
^ | \textasciicircum |
_ | \textasciitile |
| | \textbar |
< | \< |
> | \> |
書く内容を考え,レポートタイプや書籍タイプなど文章のクラスファイルを決定する.
Emacsなどのテキストエディタを開く.
最低限の必須のソースを記入する.ここではクラスファイルとして短い文書に適したjarticleを選んだ.
必須ソース |
\documentclass{jarticle} \begin{document} 内容 \end{document} |
---|
一度ファイル名を指定して保存する.ここで拡張子を.texで保存する.
続けてプリアンブル部分や内容を記述を区切りのよいところまで記述する.
ソースファイルがある程度出来上がれば,次のような方法でコンパイルする.
ターミナル上 |
platex ファイル名.tex |
---|---|
Emacs上(YaTeX) |
Ctrl + c t j
|
?や
*が表示される様であれば,そのエラー部分を修正しなければならない.
YaTeX機能にはエラー箇所へ移動するコマンドある.
Emacs上(YaTeX) |
Ctrl + c t '
|
---|
正しく修正されたかどうかを確かめるためにもう一度全体のコンパイルを行わなければならないが,リージョンを指定し特定部分のみのコンパイルを行うこともできる.
Emacs上(YaTeX) |
Ctrl + c t r
|
---|
コンパイルの強制終了は次のコマンドで行える.
Emacs上(YaTeX) |
Ctrl + c t k
|
---|
dviファイルが生成されたら次の方法でdviファイルをプレビューし,内容や構成の確認を行う.
ターミナル上 |
xdvi ファイル名.dvi |
---|---|
Emacs上(YaTeX) |
Ctrl + c t p
|
dviファイルからpsファイルを生成する.
ターミナル上 |
dvips ファイル名.dvi |
---|
dviファイルからpdfファイルを生成する.
ターミナル上 |
dvipdf ファイル名.dvi |
---|
日本語対応は次のコマンドを実行する.
ターミナル上 |
dvipdfmx ファイル名.dvi |
---|
psファイルからpdfファイルを生成する.
ターミナル上 |
ps2pdf ファイル名.ps |
---|